四季折々の表情を魅せる日本の風土
ユーラシア大陸東端に位置し、国土の大部分が温帯気候に属する日本。明瞭な四季があり、温和な気温と適量な雨量で生産性が高く、高度に成長した文化や経済を築いています。この温帯気候というのはこれまでの日本の発展を語る上で欠かすことのできない現象であり、アメリカの気候学者ハンチントンEllsworth Huntington(1876―1947)はその著書『気候と文明』のなかで、人間生活に適度の刺激を与えるもっとも活動能率の高い気候であると説いています。
しかし平地の少ない山地ばかりの日本列島は常に自然災害と隣り合わせ。古くより河川の治水事業は時の権力者にとって必須の責務でした。大河の氾濫を防ぎ、灌漑用水を整え、生産性を上げていったのです。
未曾有の大水害に毎年直面
しかし近年、そんな先人たちの経験をはるかに超えた過酷な気象現象が列島を襲っています。その地の1か月分の平均雨量がたった1時間の間に降ってしまったり、豪雪地帯ではない地域が大雪に見舞われ孤立したり。果ては遠い国の出来事であった、家屋を根こそぎ倒壊させる大竜巻が発生することも珍しくありません。
都市部でも想定範囲を超えた雨水に処理が追いつかず、排水溝からの逆流により、しみこむことのないアスファルトの道路が冠水している光景を各所で見受けます。
地球温暖化や海水面の上昇、潮流の変動にオゾン層の破壊など、確かな要因は判明していませんが、地球規模での変化のさなかにいま私たちは立たされているのです。
自然の営みと寄り添いながら
それでも私たちはこの日本を愛し、この国で生きています。自然からの恩恵を享受し、自然からの影響に折り合いをつけながら生活の基盤を築き上げてゆくのです。そのためには開発という名の急激な環境変化・環境破壊にしっかり目を光らせ、本当に必要なのか、影響はないのかを熟考し、最善の手段を選ぶ知恵を持たなければなりません。
いくら科学が発展し技術が進歩しても自然にはかないません。自然に対し尊敬の念と畏怖を抱き、謙虚さを忘れてはいけないと考えます。今後さらなる激動の環境変化に見舞われるであろう地球に生きていく私たちは、いま何をなすべきか?常に自問し続け行動に結びつけなければならない時に立たされているのです。